ジェームズ・キャメロン (James Cameron)

この監督のこの一本

ジェームズ・キャメロンは、1982年の『殺人魚フライングキラー』で監督としてクレジットされた後、長編第2作となる『ターミネーター』を世に送り出します。現在まで語り継がれる作品を、キャリアのこれほど早い段階で作り上げたことに、まず驚かされます。

私にとってキャメロンは、日本の漫画やアニメーションに通じるようなテーマを、ハリウッドで本気で形にした最初の監督です。それまでジョージ・ルーカスやスティーヴン・スピルバーグが描いてきたSFとは異なる、暗く硬質な未来のイメージと画面映えするアクションに、どこか日本のアニメーションに近い感触がありました。

夜のロサンゼルス郊外で、無言のまま標的を追い続けるターミネーターの姿は、SFというよりホラー映画そのもの。ジョン・カーペンターの『ハロウィン』に通じる恐ろしさがあります。キャメロンとカーペンターのつながりについては、「この監督のこの一本」の『ニューヨーク1997』でも少し触れました。

CGIが本格的に使われる以前の作品だからこそ、終盤に登場するエンドスケルトンは、ストップモーション特有のぎこちない動きによって、かえって不気味な存在に見えます。絞られた登場人物も物語への集中を高めています。限られた予算をアイデアで補い、それを作品独自の緊張感へ変えています。

私は、監督の想像力に技術が追いついていなくても、その時点でできるかぎりのものを、アイデアを絞って作り上げた作品が大好きです。そこに、クリエイターの本気を感じるからです。そういった作品は、映像技術が発達した今観ても、フィルムから溢れる情熱に圧倒されるのです。

物語は一見すると、きれいに幕を閉じます。しかし、最後のセリフと風景は、その先に待つものを静かに予感させます。この終わり方が異常にかっこいい。

その2年後、キャメロンは『エイリアン2』を監督します。Netflixのドキュメンタリーシリーズ『ボクらを作った映画たち』では、当時の制作現場が詳しく紹介されています。若き完璧主義者だったキャメロンが、さまざまな衝突を乗り越えながら作品を完成させ、監督としての地位を確立していく過程がよくわかるエピソードです。

年表を見ると、その後も『アビス』『ターミネーター2』『トゥルーライズ』『タイタニック』と、およそ2〜3年おきに規模の大きな作品を発表しています。新しい技術を取り入れながら、映画の見せ方そのものを更新し続けてきた監督です。

近年は『アバター』シリーズの制作に人生を注いでいるようにも見えます。それでも個人的には、もう一度キャメロン自身が監督する『ターミネーター』を観てみたいと思っています。

『ターミネーター』は、限られた条件の中で想像力を形にし、映画史に残る世界を作り上げた作品です。ジェームズ・キャメロンという監督の、技術への執念と物語を前へ進める力に触れられる一本として、この映画を選びました。

これは制作者が年表を眺めながら、その作家らしさに触れられると感じた一本です。代表作や最高傑作を選ぶことを目的としたものではありません。