エドガー・ライト (Edgar Wright)

この監督のこの一本

サイモン・ペッグ、ニック・フロストと組んだ「スリー・フレーバー・コルネット・トリロジー」は、どの作品も大好きです。その中から今回は、3作目の『ワールズ・エンド』を選びました。もしかしたら一番評価が分かれる作品かもしれません。

これまでの2作品ではどちらかというと常識人だったサイモン・ペッグが、本作では過去に縛られたダメ男を演じ、一方のニック・フロストが現実的で落ち着いた人物になっています。この立場の逆転も新鮮で、とても印象に残りました。

本作はシリーズの中でもアクション色が強めですが、エドガー・ライトはスピーディーさとユーモアがありつつ、視覚的にわかりやすいアクションを撮るのが本当にうまい監督だと思います。マーベルの『アントマン』を監督する予定もありましたが、実現せず残念でした。

エドガー・ライトは007シリーズへの愛情をたびたび語っています。『ラストナイト・イン・ソーホー』にもその影響を感じさせる場面があり、いつか007を監督する姿も見てみたい。とはいえ、やはりもう一度サイモン・ペッグ、ニック・フロストとの3人で新作を撮ってほしいと思っています。

年表を眺めると、およそ3〜4年ごとに一本というペースで作品を発表しており、作りたい作品をじっくり形にしている監督という印象を受けます。どの作品も完成度が高く、一度も期待を裏切られたことがありません。

彼の映画は、決して上品な題材ばかりではないのに、どこかイギリスらしい洒落た空気があり、洗練を感じさせます。一方で、物語の後半になると勢いが加速し、少し悪ノリに振り切れる作風は、好みが分かれるかもしれません。

『ワールズ・エンド』も物語が進むにつれて大胆にジャンルが転換し、後半は思いもよらない方向へ進んでいきます。その変化を受け入れ、楽しめるかどうかが、この作品の評価を分けるポイントではないでしょうか。

そして、丁寧に伏線が張られていることもこの作品の特徴です。映画のタイトルや訪れるバーの名前、冒頭のあるシーンにすでに後半のヒントが隠されていたりと、当たり前ですが「全部計算されていたんだな」と、見返すたびに感心させられる一本です。

これは制作者が年表を眺めながら、その作家らしさに触れられると感じた一本です。代表作や最高傑作を選ぶことを目的としたものではありません。