デイヴィッド・リンチ (David Lynch)
この監督のこの一本
イレイザーヘッド (1977)
私が最も好きな映画監督の一人がデイヴィッド・リンチです。
タイムラインを眺めていて、まず感じるのは「もっと作品を撮ってほしかった」という思いです。その独特な世界観をもっと映画館で体験したかったという気持ちが残ります。
私が最も好きな作品は『マルホランド・ドライブ』ですが、このコラムで紹介したい一本は、長編デビュー作である『イレイザーヘッド』です。リンチ監督の最後の長編映画となった『インランド・エンパイア』は『イレイザーヘッド』と強くつながっているように感じられたからです。
不安と夢、説明不可能な現実と幻想が不規則に混ざり合うストーリー、独特の音響設計。リンチ作品を特徴づける表現は、この最初の長編である『イレイザーヘッド』ですでに強く表現されており、その後の作品群でも一貫して描かれ続けています。
言い換えれば、リンチはキャリアを通して、同じテーマを延々と描き続けたように感じます。それは彼の作品世界のテーマの一つである、円環的な世界観そのものを思わせます。
年表という視点で見ると、この作品の次に『エレファント・マン』を撮り、その後にはルーカスからのスターウォーズへの監督打診を断り、大作『DUNE/デューン』(1984)の監督に抜擢されています。(結果的に監督自身は不本意だったにしろ)当時の映画業界がリンチという特異な才能にどれほど大きな期待を寄せていたかが、この流れからも感じ取れます。
『イレイザーヘッド』はモノクロ作品で、内容的にも決して万人向けの作品ではありません。しかし、リンチという映画監督の原点を知る一本として、この作品を紹介しました。
これは制作者が年表を眺めながら、その作家らしさに触れられると感じた一本です。代表作や最高傑作を選ぶことを目的としたものではありません。